あまりに基本的な断熱材の4つのルール

「断熱」とは、室内と屋外の熱移動を遮断して、外気温が室内に伝わりにくくすることです。

夏は「屋外の暑さが室内に伝わらない」
冬は「屋外の寒さが室内に伝わらない」
ようにします。

夏は「室内の涼しさが屋外に逃げない」
冬は「室内の暖かさが屋外に逃げない」
と言い換えることもできます。

断熱性能を上げることで、「夏涼しく、冬暖かい」家にでき、冷暖房費も抑えることができるため、断熱性能は快適(健康的)かつ経済的に暮らす上で非常に重要です。ここをおろそかにした時点で「家づくりの失敗」が確定します。ゼネコンに勤めていた私にとっては、ある意味常識とも言えます。

あまりに基本的な断熱材の4つのルール
~ その① ~ 「断熱性能は掛け算!!」

一般的に使われる「住宅用グラスウール(10K)」の熱伝導率は、0.050W/mKです。旭化成のネオマフォームのように0.020W/mKの高性能な断熱材もあります。グラスウールの半分以下(40%)しか熱を伝えません。それでも3倍の厚さにすれば、グラスウールの方が断熱性が高くなります。

いくら「断熱性能が高い断熱材でも薄かったら意味がない」ということです「断熱性能は掛け算(熱伝導率×厚さ)」で決まります。

あまりに基本的な断熱材の4つのルール
~ その② ~ 「断熱材は建ててしまったら変えられない!!」

当然ですが、断熱材は構造躯体といわれる壁や床、屋根の中に入ります。完成してしまえば見ることはできませんし、もし交換しようとすると、壁や床をはがさなければいけません。費用も高額になり、現実的ではありません。つまり、新築以降あとでやり直しができません。一方、キッチン等の設備はやり直すことも可能です。

限られた予算の中、優先順位をつけて家づくりをするのであれば、まずは新築時にしかできないところにお金をかける。予算をかける順番を間違わないようにすることがポイントです。

あまりに基本的な断熱材の4つのルール
~ その③ ~ 「コストパフォーマンスで考える!!」

断熱性能が重要とお伝えしては来ましたが、断熱性能を上げるには当然コストがかかります。予算制約がないのであれば問題ありませんが、何事もバランスが重要です。必要以上に断熱性能を上げても、ランニングコスト(冷暖房費)では回収できない事態に陥ってしまいます。

参考までに、私が採用した断熱材とその金額をご紹介します。私は断熱性のクライテリア(目標値)を、「次世代省エネルギー基準のⅠ地域」以上と定めました。この目標値をクリアするため、壁、床、屋根それぞれに求められる熱抵抗値は以下のとおりです。


①壁: 3.3㎡k/W
②床: 3.3㎡k/W
③屋根: 6.6㎡k/W

この基準をクリアする以下の断熱仕様にしました。
①壁:旭化成・「ネオマフォーム」66mm厚
②床:旭化成・「ジュピー」66mm
③屋根:「フォームライトSL」240mm厚

ちなみに、ネオマフォームとジュピーの熱伝導率は「0.020W/mK」、フォームライトSLの熱伝導率は「0.040W/mK」です。以下、それにかかった金額です。

①壁: 28,600円×20ケース=572,000円(税抜)
②床: 16,550円×15ケース=249,750円(税抜)
③屋根: 2,660円×120㎡=319,000円(税抜)

①壁と②床は材料費のみ、大工手間は別途です。③屋根はゼネコン時代の知り合いの断熱屋に頼んだ材料・施工費共の金額です。①~③合計で約110万円。延床約50坪の家なので、約22,000円/坪です。

仮に、①壁をグラスウール(750円程度/㎡)にした場合、壁面積が約200㎡なので、750円×200㎡=150,000円で済みます。約40万円のコストアップです。

②床、③屋根も同様に計算すると、①~③で約70万円程のコストアップになりますが、断熱性の向上により、冷暖房費が格段に安くなるため、15年もあれば回収できます(4万円/年)ハイブリッド車を買うのと同じ感覚ですね。

ただし、金額を無視すれば、断熱性に上限はありません。断熱性能が目的にならないように注意しましょう。

あまりに基本的な断熱材の4つのルール
~ その④ ~ 「最後はやっぱり現場!!」

十分な断熱性をもった断熱材を選んだとしても、最後、施工するのは現場の職人さんです。ネオマフォームを現場合わせでカットすることも必要ですし、ボルト等の金物がある部分は、一部断熱材をかき込む必要もあります。きちんと丁寧に施工してくれる施工業者に依頼すること設計者にしっかりと監理してもらうことが、結局一番重要なのかもしれません。また別の機会に「正しい施工業者の選び方」についてもご紹介したいと思います。

■壁に「ネオマフォーム」が充填された状態

■床に「ジュピー」が充填された状態

■「ジュピー」を受ける金具